岐路で指針になる言葉

即興をベースにした稽古に臨み、みなさん試行錯誤の日々だと思います。私も、汗をかきかき〝相川三郎〟像を探っています。

人生に岐路はつきものですよね。今回の演目では、右に行こうか左にいこうかと生き方に悩んだり、信じる道を突き進んだりと、色々な人間模様が交錯しています。そして、昔の職場・友・家族・パン屋・医師・ホームレス…とフォーカスされる人物やシーンも様々。

先日、私自身の人生を改めて見つめなおす機会に繋がり、且つ医師役を演じられる方のみではなく、舞台に取り組む全員の役作りや生き方にも、大なり小なり参考になるであろうと思われる、琴線に触れる言葉に出会いました。

それは、ミャンマー等で、25年以上小児外科医として活躍中の吉岡秀人先生のドキュメンタリーのなかで、先生の口から発せられたものです。

「本当の失敗は行動しないこと。」

「医療は命を助けることだけではなく、治療の前後で患者の生活の質を向上させること。」

「完成されないことがエネルギーを生む。不完全さは人生においてはさざ波。それをエネルギーにして進め。」

「時間を何に変えるかによって人生の質が変わる。僕は僕のためにやる。自分のために時間を使う。あらゆる行動を自分のためにやっているから続けられる。」

「自分の人生を大切にし、自分の価値を自ら悟る。」

「最も人を幸せにした者が、最も幸せになれる。」

これらの言葉は、現役時代の生き方に疑問符を抱いていたであろう三郎が、新たな文化に出会い、生き生きとしたセカンドライフを送ることになって行く背中を押す気がします。加えて、舞台に限らず、私の実人生でこれから出会うであろう岐路と対峙した時にも活かしていきたいと思うほど、経験に裏打ちされた重みのある言葉だと心に刻みました。

アベ

パンを求めて青梅に…

かんじゅく座グループラインに、3月22日ごえもんが、同25日にヨッシーが投稿した記事の続編です。

3月21日(火)、青梅市の移住者募集キャンペーン「映画と里山料理の休日」というイベントに参加してきました。かんじゅく座からは、ごえもんとヨッシーとヒコ。私の場合は、カミサンが今も田舎暮らしを熱望しており、カミサンの代役という名目で行ってきました。

第一部は、映画館「シネマ ネコ」で映画鑑賞!かつて織物の街として栄えた青梅の面影を残している木造建築物が映画館。なんと国登録の有形文化財で、しかも東京唯一の木造映画館です。2021年に映画用の最新設備を入れてオープンしたとのこと。一歩この建物に足を踏み入れたときから、今日一日が楽しくなることが予感できました。

映画は「しあわせのパン」(主演 原田知世・大泉洋)。北海道・洞爺湖のほとりにある宿泊設備を備えたパン・カフェ「マーニ」が舞台。それぞれに事情を抱えた客たちが訪れ、客たちは心優しい夫婦が作るパンを分け合い、心を癒されていく。そして元気をもらって宿を後にする。

焼き上がったパンを食するとき、この夫婦は片方がちぎったパンを相手に渡す。そして二人は口いっぱいにパンを頬張って顔を見合せ幸せな顔をする。この何とも言えない二人の笑顔が忘れられません。

第二部は「石薪窯パン工房・麦」に移動。店主は60年前に沖縄から上京してきた渡辺芳子さん。(ちなみに〝タルマーリー〟のオーナーは渡邉格さん。これを書いているのが渡部俊比古さん。)薪窯はご主人の手作りとか。朝早く石窯に薪をくべて三時間焚き、高い温度からパン・ケーキ・クッキー・ラスクの順で、窯の温度に合わせて焼いているそうです。

交流会が始まりました。火をおこしたり、スープを作ったり、リンゴを切ったりと私達参加者もお手伝い。さぁ、石薪窯の美味しいパンが焼けました。(ごえもんが送った写真をご覧下さい!)皆で料理したソーセージと茹でた野菜をのっけてガブリ。そしてスープ!自然に笑顔がこぼれます!パン工房のお隣は静かな里山。ゆったりと里山の時間が流れていきます。

畑から始まるパンづくり。森と繋がっているパンづくり。パンづくりにかける手間とひま。天然酵母パンの奥行きの深さ‥‥などを思い浮かべながらしっかりと味わいました。美味さが身体中にひろがっていきます。

渡辺さんが石窯の前で黙々とパンをつくっている姿を拝見して、「パン屋の手紙」に出てくる一文を思い出しました。「中世のフランスではパンを焼くところを〝祭壇〟と呼んでいた。」「建築士の中村さんはチャペルと呼んでいる。」

この度、牧師の役を演じる私にとって、この場面をしっかりと頭に刻みました。
ヒコ