〝ザ ・ポケット〟初舞台

出前公演の時よりはリラックスして楽しみながら稽古をして、本番を迎えることができました。自分が考えた台詞は覚え易かったし、気持ちを乗せるのが壮快でした。まくら(ホ-ムレス)との出会い。れいこは支援者、銀行マンは仇。とてもわかりやすい設定です。

れいこには最大限の笑顔と明るい語調で話しかけました。銀行マンには低い声でまくし立て、追い詰めるように怒鳴り散らしました。この急転直下の語調の変化を演じることがとても大切と考えました。

追い詰める台詞のキーワードは、「仕事」「銀行」「融資」「退職金」「死亡お見舞い金」「倒産寸前」「見殺し」「助ける」。特に「融資」の「ゆ」と「う」は息を喉の方に吸い込むようになるので、発音に気をつけました。「融資」が客席に届かないと、まくらがなぜ銀行マンをどなりちらしているのかがわかってもらえないからです。

今回は出番も台詞も少なかったので、細かいことに気をつけながら舞台に立つことができました。台詞の速さ、強弱、間の取り方、滑舌等を本番の舞台上で体感できたことはとても貴重な経験でした。

しば

パンと発酵の話

「旅はまだ終わらない」で、重要なシーンの一つは天然酵母のパン屋。既存の量販店とは違い、酵母種作りから成型&焼と、手間暇掛けて成果物に至る過程の入り口である酵母の発酵に関する知識習得のため、発酵料理人〝宮崎麻子先生〟による講義を5月5日に聴講しました。

レジュメに沿って、〝菌〟~〝食べること〟までの講話。漠然としか理解していなかった天然酵母パンの発酵。その具体的内容に触れた時間は有意義で、全て興味深いものでした。その中で私が特筆すべきと思った箇所を、いくつか以下にピックアップします。

◼️酵母菌は、発酵の過程でアルコールと炭酸ガスを吐き出し、良い香りの元となるエステルを作り出す。

◼️パン生地は30℃で、酵母は20℃で活発に活動する。

◼️酵母の営みが最も活発になった瞬間、オーブンに入れて皆殺しにしてしまう。

◼️酵母が死滅しているのに、時の経過とともにパンの味が深みを増していく原因は不明。

◼️発酵料理人である私の舌で味わった鎌倉のパン屋〝パラダイスアレイ〟のパンは、全身に衝撃が走り感銘を受けた。

◼️天然酵母のパン屋では、菌に影響を与える石鹸や、歯みがき粉等の化学物質は一切使用しない。

◼️微生物は甘い物が好きで、レーズン酵母が使いやすく、葡萄そのものに酵母が付着している。

◼️新たな植物等で酵母種を醸成するチャレンジをした場合、満足出来る成果物は3割程度しかなく難しい。

◼️社会の発展に伴う環境の変化により、共生すべき菌も減少傾向にある。

◼️人はあまりにも加工品に慣れてしまい、我々は鈍感になり弱りつつある。

◼️私は発酵料理人として、菌たちと一緒に料理を作っている気持ちになる。

◼️【結び】
これから我々が出来ることは、よく吟味して良いものを選ぶことと、食にお金を掛けること。

今回の受講で、普段何気なく食すパンが、デリケートな菌を活かし、そして菌に助けられ、我が子のように大事に育てあげられることに触れて、パンに向ける思いも改まりました。

製パンをするパン屋メンバーは勿論のこと、それを味わう徹やミサに参集する人々、そしてフードバンクの職員としてパンを配布する三郎やボランティアのれいこ、それぞれがその製造過程に思いを致し、パンが繋ぐ絆を意識しながら、演技を組み立てることの重要性を再認識しました。

アベ