とにかく動く!

 5月の本公演に向け、立って行う本読みが続いています。今回の物語は、限られた空間で大きな動きに制約が課されるシーンに、大勢の人物が登場することが多々あります。そんな場面では、ともすると演者間の台詞の応酬による個々の関係性や、取り巻く者達の心理的距離が客席に伝わらないこともありそうです。

 それを意識したうえで現段階のエマさんの演出は、誰が誰に対して問いかけたり応えたりしているのかを明確にする。加えて台詞を交わす当事者同士だけではなく、それを耳にした取り巻きが抱く反論・驚き・賛同、好き・嫌いという心理的な距離を、あえて物理的な距離にして表すことで体得出来るように、「意思を持って自由に、とにかく動いて!」の指示。これにより、舞台上には誰一人として傍観者はいないという自覚が芽生え、各々の役の感情を考える一助に繋がっている気がします。

 つまり、好感の持てる相手の言動ならばその者との距離を詰め、嫌気する相手の言動ならばその者とは距離を置くよう実際に動いて、どの登場人物のどの言葉に自分の感情がどう反応するのか、より鮮明に意識出来るのです。

 これによって、与えられた自身の台詞をただ読み合わせることに比べて臨場感が増し、喋る相手も個人に向けてなのか集団に向けてなのかも絞れます。またその台詞により相手や取り巻きはどんな感情を抱くのかが可視化され、物語の全容を掴むのに大いに活きて来るのだと思います。

 この稽古を重ねながら、ふと、「あれ?」と思うことがあります。それは、昨年末に経験した 、“相手の台詞を聞いて自身の思いや台詞。そして動きも紡いだインプロ” での学びに通じているということです。

 距離で感情を表す今の稽古は、動きに制約を受けることもあるシーンも控えた本番で、丁々発止と繰り出す台詞に、重さと厚みを増してくれることになるのでしょう。面白くなって行きますよ。今回も!            アベ

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