インプロワークショップに参加して

 稽古場でインプロ(improvisation=即興)のワークショップが2回にわたり開催された。講師はインプロの第一人者、絹川友梨さん。滑舌よく、キラキラした瞳、ひまわりのような方。

 さて、インプロとは何ぞやと白紙の状態で臨んだ私。鶴瓶の「スジナシ」みたいな即興芝居をやらされるのかと思いきや、素人のシニア集団にいきなりそんなことは要求されません。多種多様なエクササイズが用意され、その中から受講者に合うもの、誰でもできるものがチョイスされ、あれよあれよという間に始まっていました。

 たとえば、最初は輪になって「あなた」といいながら誰かを指す。指された人が別の人に「あなた」。そのうち「あなた」と相手の名前を互い違いに入れていく。集中力を必要とされながらも何とかクリアできる練習。

 続いて次から次へと課題が提示される。たとえば、3人一組で、子どもの頃の遊びの風景をつくる。観客が理解したら、動きをどんどんつけていく。各グループが違う遊びを表現し、ああ、こんなことやっていたなあと思い出に浸るシニア続出。

 友梨先生は、ひとつのポーズを指し「後ろを向いてみて」「手の形をグーからパーにして」など、ほんのちょっとのポーズの違いが、見ている人に違うイメージを与えることをさりげなく指摘。

 また、別の課題では、ふたりの会話。一方の人にお題が与えられる。「お金を返してもらう。」もう一方の人はお題を知らない。どのようにもっていけばお題を達成できるか考えながら話を展開していく。私は何も知らず、喫茶店で待ち合わせした友達役。

 「久しぶりね」から始まり、「ここ、前にも来たの覚えてる?」「そう?」「前来たときケーキセット食べたじゃない」「そーか、思い出した。美味しかった」「あのとき、現金の持ち合わせがなくて、私がカードで払ったの」「あら、やだ、じゃあ今日は私がおごるわ」「それがね、あのケーキセット無くなっちゃったらしいわ」「まあ!じゃあ今お返しするわね。千…いくらだっけ?」大成功!お金を返してもらえたグループとダメだったグループがいて笑いの渦。

 その他にも趣向を凝らしたエクササイズが続き、そんな中で私が感じた”芝居に必要なエッセンス”は

① 決められたスジやセリフがないので、まず相手のいうことをよく聞く。

② それに柔軟に対応する、

③ アイコンタクトや体のちょっとした動きも表現を助ける。

④ 思いがけない状況になっても否定的にならず、その場を拾い上げて前に進める…etc.

 おそらく、もっともっといろいろなことが学べるんだろうなと思いながら、初めてのインプロ体験は終了した。体の芯が暖かくなるような、楽しい時間だった。            小春

演出家の視点に立って

 11月3日“金太郎チーム”の稽古で行われた“演出席体験”を実際に経験した、トモさんとマリリンの感想です。

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 人間は、年を取るごとに自分と似たような人とばかり接しようとするため、自分とは全く違う環境にいる人との関わりは、新たな気づきを与えてくれる。

 まさに、今回の演出経験は、観る側と演じる側と全く別の環境での体験だった。当初、演出とは演技指導が主で、後は、それなりと思っていたが、とんでもない話しで舞台の全体を通して、観る側がどう感じるかであり、はては、小道具の置き方や使い方にまで気を配り、見逃さない。

 これは、役者にも通じる話しだ。私が、初めて劇場の舞台に立った時のこと、メガネを出してノートを見る場面があった。当然、メガネケースから出すはずだったが、私は忘れることを恐れて、初めから服のポケットに仕込んでおいて、そこから直に出して演技を始めた。それを、後から注意されたのを思い出した。            トモ

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 エマさんが「演出をやってみたい人?」と聞いた。私はちょっと躊躇したが・・・そうだそうだ、年間に何本も芝居を観ているし、観劇後によくアンケートも書いたし、おっおーやってみたいと立候補し、MさんとTさんの芝居の組を観ることになった。いつもはエマさんが位置する椅子に、台本と鉛筆を持ち座った。何だかとてもわくわくし緊張したが嬉しかった。

 役者が芝居を始めだして、メモをしようとメモしだすと、その数秒間、芝居を観る方がお留守になってしまうのはよくないし・・・あっあれ~目が四つあったらなぁ・・・と。(演出家は忙しい。だから劇団によっては演出助手をつけている所もあるようだ。)

 「芝居が面白くなるようにアドバイスを。」と言われ、今まで受けた色々なワークショップが頭をよぎったが・・・拙いアドバイスをして、もう一度役者が演じてみると、数パーセントでも、私の言ったことを一生懸命にしているその姿に、私は胸が躍った。

 芝居は男の子二人のやり取りだが、MさんもTさんも台詞のある一瞬は、男の子を演じているという自覚があるように見受けられたが、多分次の台詞を考えている時とか、役としてでなく本人同志のテレがあるような時は、その役に見えなかったように感じた。一瞬に見えた役を持続するには・・・?集中力なのか・・・?役に入るということは、どういうことなのだろうかと考えさせられた。

 人が、私自身の動きたいように演じてくれたら、イメージ通りになったら・・・こんな面白いものはないかもしれない。ところが、人はそう簡単にはうなづいてくれなかったり、反発したり、又逆に自分が思った以上の事を見せてくれたりしたら・・・演出家は大変だが、面白そうである。これから芝居をするにも、常に観客からどう見えるかを考え、役になりきる為にも、もっともっと工夫して演じていかなければと思うとともに、演出というものも勉強したくなった。貴重な良い体験楽しかった!

 添付の写真は、今秋初挑戦した日本画。見直してみてふと思った・・・さしずめ絵画も絵の具が演者で、構図や配色を考える私はある意味演出家?表現するとは演劇・絵画・音楽…etc.どれをとっても、相通ずるものがあるのだなと・・・          マリリン
 
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