衣装合わせになに着よう?

 新演目「パリテ」の稽古が徐々に進む過程で、楽しみの一つである衣装合わせが目前です。経験浅い私ですが、これまでに演じた「親分に従順な大工」「親父に反発しながら成長する高校生」「世間知らずのネコ」、そして今回演じる「尻に敷かれるタクシー運転手」などの配役が決まる都度、心踊らせて洋服箪笥を引っ掻き回したり、衣料品店に目が行くようになった自分に気付きます。

 台本を読み込み、配役の履歴書を作成していく時、皆が自分なりのイメージを膨らませていると思いますが、個々に衣装を持ち寄るだけでは、鮮やかな舞台にはならないのでしょう。きっと!

 そこで欠かせないのが、演出家の助言です。それは、昨秋の出前公演「ねこら」の、あの彩り豊かな舞台写真を見れば一目瞭然です。

 ついては、衣装の選定が独りよがりにならぬよう、俯瞰的に舞台に視線を送り、構成を練る作演出家の視点を知りたくて、エマさんに質問を投げ掛けてみました。

Q.衣装合わせで、最も留意される点はどこですか?
A.遠くからでもハッキリと役柄が識別できること。そして役者の士気を高めること。

Q.個々の衣装の色合いやスタイルは、どの段階でイメージしますか?
A.書いている時にもイメージしていますが、本読みしていて変わってきます。また、稽古している段階でも私の予想を覆すキャラクターになった時は、変わってきます。イメージを変えてもらえるのは、世界が広がるので面白いです。

Q.舞台全体の色彩が決まる順番は?
A.「美術」「装置」の存在は大きいです。舞台を見た時にパッと目に入ってきますよね。でも、装置が目立って人が目立たない、では良くないと思います。装置も衣装も殺し合うのではなく、引き立て合うのが良いと思うので、同時に考えています。照明は両者を引き立てるものだと思うので、特殊な効果(スモークやストロボなど)でない限り、時間と場所の設定(朝、昼、夜、室内、野外)くらいしか気にしていません。照明プランナーが芝居のイメージに合わせて考えてくれるので、劇場に入って照明を見てぶったまげる!というようなことはないです。

Q.個々の衣装の最終的な決定要因は何ですか?
A.配役+時代かな。。。配役+役者の個性+時代と答えたいところですが、役者の個性というと語弊がありますね。役者に似合うことはとても重要ですが、役者がそれを着て変身出来ることが大事だと思うので、気に入ったものばかりではないと思います。「普段こういう色は着ないけど、この役に近づくために着てみよう」と思ってもらえればいいのですが。。。。

Q.作品の構成上、衣装が占める重要性とは?
A.かんじゅく座のように、同じ年代の人が子供から高齢者まで演じなければならない時は、衣装で識別するしかないので、非常に重要です。それから、全体の雰囲気、時代、社会情勢もわかります。また、役の向かう方向も色で示すことができるので(ベタな例ですが、陰鬱な青年が希望を持って生きるようになる、など)盛り込める意味合いは多数あります。逆に、意味のない衣装はないです。

Q.その他、作演出家の視点で衣装合わせについて思うことは?
A.着るのは、自分ではなく、役ということ。変身できることを楽しんでほしいです。

 質問は以上です。個々のキャラクター作りによっては、作演出家のイメージさえも覆す可能性も秘め、意味のない衣装はなくて、衣装を着るのは役であり、変身を楽しんで!などの回答に触れ、物語と配役の背景をじっくりと読み解き衣装を選ぶことの、重要性と楽しさを再認識しました。

 さてさて、これを踏まえて6月の本公演の舞台に繋がる衣装合わせでは、「なにを着ようかな?」。
           アベ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA