朗読これまた奥深い

 竹久夢二の作品、「風」を朗読。まずは初見で音読をした。

 里山から吹き下ろす〝風〟に命が吹き込まれ、あたかも意思を持っているように上昇下降を繰り返し、干物台のエプロン、子供の着物、道端の煙草の吸殻、紙屑さえも巻き込んで自由に遊び、悪戯をする。そして、その渦中で帽子を飛ばされ翻弄される少年も含め、全てが登場人物になる物語。

 輪読が進み全員がストーリーを把握したところで〝本作品を映像と捉えて表現をっ!〟と。つまり朗読者自身が映画のカメラとなって場面の変化に合わせ、アップにしたりパーンしたり引きのロングショットにするイメージを持つようにと、エマさんからの指示が飛ぶ。

 岡本太郎の〝芸術は爆発だ!〟との言を初めて耳にした時のように、私は何となくイメージは分かるものの、具体的に表現する術がすぐには見つからず〝う~ん〟となった。

 しかし、若かりし頃少しかじった朗読教室で、朗読表現の肝は〝抑揚と間〟しかない、と、凝り固まっていた私の頭には、とても新鮮なアドバイス。

 目を閉じて仲間の朗読を聞くと、人によりカメラの位置も異なり、私の中に広がる心象風景はそれぞれに違ったが、苦労しながらもカメラ目線を持とうと各自が努力するそれからは、単なる音読とは微妙に変化する兆しを感じた。

 いずれ、縁あってナレーションを受け持つことがあった場合、この映像感覚を持った〝語り〟にすることで、単なる進行役とはひと味違う、大切な演者の一人になり得るのだろう。

 朗読。これまた奥深いと感じさせられた貴重な時間に、また出会った。
           アベ

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