「あの日のトンネル」が終演し、次の出会いに心踊らせつつも、公演の余韻にまだ少し浸って、緒に着いた年初から本番までを、今でもたまに振り返る。
今回の演目に触れた当初、あれっ!実年齢から60年さかのぼっても、もう生を受けヤンチャな小学生だった。そんな歳にまでなっている・・・俺。時の経過のなんと速いことか。が、第一印象。
初めて台本を目にした時は、字面を追うばかり。盛り沢山の内容に60年間の時の往来、トンネル掘りにウサギの逃走など、板上を想像しても自分はイメージが湧かず、これ、うまく伝わるの?との戸惑いを覚えたことを思い出す。
しかし、稽古が進むと “な~るほど” と膝を打つ演出にその戸惑いもいつか失せ、プロローグからエピローグまで、12の場面が積み木のように積み上がって行く様に惹かれていった。
本番では途中の幕間などに、エンディングで披露する歌がインストゥルメンタルで流れているのを耳にした。そう言えば以前基礎講座で音響の専門家が、「音響でも伏線を張ることがある。」との発言をしていたのを思い出し、アッ!これがそうなのかなと勝手に感じ……舞台後方落とし気味の照明の中で、生徒達の教室風景が無言で展開され、その前でスポットライトが別の場面を照らし出しているのを観ては、光の濃淡が文章で言う行間を現しているように感じた。
最後は拍手を頂けた舞台。座員達のひた向きな演技に加え、作・演出家はもとより、舞台監督や制作のサポート、照明、音響、そして文庫本の後書きを彷彿とさせるような心打つ歌の作詞と作曲。その全てが物語を盛り上げた。
トンネルをくぐり抜けた先も宜しくとの思いに加え、改めて全てのスタッフの努力と来場のお客様に感謝の気持ちを伝えたい。今年もまた、夏の日射しと入道雲が近づく中で…
アベ