彫刻家が彫刻の原型となる塑像を作りあげる工程を彫塑と言うそうだが、それに似ているようなインプロがベースの立ち稽古。当初不慣れで戸惑いを覚えたが、徐々に見えて来たものが!( “今頃!?” と、ダメ出しが出そう。)
主眼は、一言一句正確であることよりも、まず全体の流れを掴み、流れを止めないことに軸足を置く…台本を持たない立ち稽古。
インプロで自由に台詞が飛び交って、重ねるごとに物語の陰影は増していくものと想像していた。しかし、実際は相手が発するアドリブに「ウッ・・!」と、時折台詞が迷子になって流れを止める。はて、それは何故?
積み重なる12の場面は、それぞれ違うテーマや空気を纏う。「その場に登場するあなたが、そこでやるべき目的は何?」と、エマさんからの問い掛けは続き、「目的をしっかり持てば、自ずと即した言葉を発するし、自然に語調も変わるはず。」との助言が響く。
今回の経験を通じて、繰り返しの台本熟読・精読の際、自分の台詞ばかりを追わずに全体像を把握する大切さを今更ながらに痛感。加えて、インプロであっても場面の目的がブレては本末転倒。ついては、目的に沿った流れを維持するために大切な、 “肝” となる台詞を的確に把握して発しなければとの意を強くする。結局それが、場の空気感を一変させたり、演者達の瞬発力・適応力を高め丁々発止のやり取りに繋がるものと再認識。
因みに、私の台詞にも「トンネルで脱出」「上に命令されてやってんだ」「自分より偉いやつだよ」「生きたいところで生きる」…etc.と、後の展開の伏線となり、しっかりと相手に渡すべき “肝” が散りばめられて…それを意識していたら、本来の台詞も腹に落ちていることに今気付く。
彫刻家が何度も素材をぶち壊し作品を仕上げる際も、 “肝” となる角度や曲線があるのだろう。と、思いを巡らせながら、また稽古場に立つ!
アベ