演劇の力

 「あの日のトンネル」は、かんじゅく座に入り初舞台でした。本番までは、稽古稽古の日々でした。

 カーテンコールの時に、お客様がハンカチで目をぬぐう姿が見られました。くすっと笑いが起きたり、涙を流されたり、気持ちが揺さぶられること。それをその場で受け取り感じること。これこそが、生の舞台の醍醐味ですね。演じていても、ラストの歌では私も自然に涙が流れていました。

 5月27日みかん組の舞台を観てくれた35歳女性に、翌週感想を聞きました。仕事がとても忙しい真っただ中にこの舞台を観て、「特にジンときたセリフが、今の自分にあてはまる酒匂先生が卒業式に話した次の言葉。」だったそうです。

 「悲しいとき、辛いときは、その思いを書き留めてください。しっかりと文字に書くことで、自分の心と向き合って、今何をすればいいのか、正しい判断ができるようになると思います。」

 私は軽く受け止めていましたが、観る人それぞれに感動する場面は違うものなのだと感じました。

 加えて、「ストーリーを追っていって現在と過去が行き来して最後はどうなるんだろう?と思いながら観て、とても面白い話だった。構成も手前で話をして、すぐにストーリーに入っていったりとても良かった。」との感想をいただきました。

 芝居で人に感動してもらえることは、稽古稽古で大変だった日々が報われるご褒美なのだと感じました。
           葉月

あの日の初舞台

 定年退職まであと半年。ローンがあるから働かなくてはならない。でも私がやりたい事ってなんだろう。そう思っていた昨年10月、どこで見つけたのか自分でも覚えていないが、出会ってしまったのです。かんじゅく座に。

 早速見学をさせて頂くと、 “パリテ” のお稽古中。失礼ながら高齢者のレクリエーション程度と高を括っていた私は、本格的な指導と本気の役者さん達に感動してしまったのです。

 “ゴロロと登くん” のやり取りに味をしめ、たのしい〜!わたしのやりたかったことはこれだ!と、水曜日に、仕事を休んでお稽古に行くのが、とても楽しみになりました。

 そして「あの日のトンネル」配役の発表。ショートカットの私は男の子役なのかなと思っていた。トイレから戻ってきたら、はま児さんが「えみちゃん敦子さんよ!」へぇ。あつこさん。あ・つ・こ・さん?あつこさんて敦子さん?・・・えー?敦子さん!わたし〜〜?!

 私が不安だった以上に周りの皆さんの不安は、大きかった事でしょう。退職するまでの年度末、仕事を休む後ろめたさと、お稽古を休む申し訳無さとに挟まれ、改善されない “ご機嫌口調” と “掴みきれない敦子像” に苦しみましたが、私の発声のためにお稽古が進まないことにも本当に申し訳なく思っていました。

 何とか皆さんの足を引っ張らないようにと、必死でした。そんな私を、水曜日チームの皆さんが、何度も励ましてくださり、発声や役作りのアドバイスをしてくださって、何とか千秋楽を迎えることができました。

 エマさんも「最後の頼みだ。」と重心を下げる体操を教えて下さいましたが、さぞご不安だっただろうと思います。夜中に「やめて!どうしたの!」と叫ぶ声は近所の方には、高齢者虐待を疑われたのではないかと気になりながらも、自主練に励む毎日。母からは「お前学生時代にそんくらい勉強してたらね〜。」と言われておりました。

 実はかなりのあがり症で、緊張すると手も声も震えてしまうので、本番は真っ白になるのではないかと思っていました。舞台袖では吐きそうなくらいドキドキしてました。
でも、「舞台の上はライトが当たり別世界で夢を見てるみたいだよ。 」と、小春さんが言っていた通り、舞台に上がるとあっという間で、あれは夢だったのではないかしら。と公演が終わった今、安堵と感動と充実感と寂しさでいっぱいです。

 この年になって仕事ではなく、一つの目標に向かってみんなで力を合わせて作り上げることの喜び。厳しい指導も新鮮で、今までにない経験でした。脚本も歌も素晴らしく、本当に良い作品に参加させていただき幸せでした。 これも、仲間が居たからだと心から感謝しております。

 「よく頑張ったね。」と皆さんに声を掛けられたときには、充実感とホッとしたのとで、本当に涙涙でした。素晴らしい出会いに心から感謝します。

 結局仕事は家から近いところに転職し、残念ながら6月からは仕事に戻らなくてはなりません。不登校のお子さんと関わる仕事で「あの日のトンネル」とのご縁も感じます。でも、お芝居を続けたい思いは変わらないので、5年後また仲間に入れてください。それまで皆さん居てくださいね。

 みかんチームの皆さんからも、動画を見てセリフの言い回し、間のとり方、動きを勉強させて頂きました。同じ脚本でも随分違う作品になるのだなぁとびっくりしました。あまり交流がありませんでしたが、また戻ったときには宜しくお願いします。

 それでは皆さん。お体を大切に。これからもご活躍ください。短い間でしたが、本当に有り難うございました。これからも公演観に行きます。かんじゅく座バンザイ!            えみ