ありがとさんさん子供達

 毎年恒例の出前公演が、12月16日に都内の児童館でスタート。今回の観客は16名の小学生。

 古稀が間近な私の記憶に、低学年で観劇した着ぐるみの劇団〝木馬座〟に、心が踊ったあの日が残る。それと同じく今日この時間が、心柔らかな子供達の未来まで、残れば良いなとの思いで舞台に立った。

 舞台は最上階の体育館。ガラス貼りの壁面越しに、初冬の優しい陽射し。あたかもオレンジ色のスポットライトのように我々を照らし、セットの木の葉も浮き上がらせて。

 開演すると、舞台に見入る子供達。〝土居くん〟のアクションに笑い、音楽の生演奏に拍手。そして、怖い〝かしら〟の動きには固唾を呑んで静まり返り…幼心の機微がストレートに舞台に届き、私達は嬉しさに包まれた。

 日暮れて終演。子供達と演者の「バイバイ」「有り難う」「楽しかった」の声と笑顔が飛び交って、体育館には温もりが満ち満ちた。

 〝正直であること〟〝見た目だけで人を判断しないこと〟〝仲良くすること〟の大切さを伝えたかった私達。子供達が何かを汲み取ってくれればとの思いもあるが…それよりなにより、「飛び出す絵本を見たように楽しかった!」と、思って貰えるだけで充分。素敵な時間を共有出来た、そんな一日。            アベ

役名の名前の不思議

 かんじゅく座の出前公演で「タヌキの土居くん」と「花のき村と盗人たち」の芝居をすることになり、稽古も佳境になってきている。土居くんを演じることになった私は、本名が土居なので、とても不思議な気がする。劇中で土居くんとよばれることに何の抵抗もなく、かえってとても嬉しい気持ちでいる。

 「タヌキの土居くん」の絵本の著者である富安陽子さんに、なぜ固有名詞がつくのか聞きたくて、絵本についていた読書カードを郵送した。すると、何日かして福音館書店の童話セクションの方より、下記の返信が!

ー福音館書店書簡 抜粋ー

 富安さんはある日、おかしな夢をご覧になりました。夢の中で、富安さんと土居さんは一緒に道後温泉にいくことになっていて、大阪駅発の道後温泉行き夜行バスで待ち合わせをしていました。待ち合わせのバスを見つけた富安さんが指定席に行ってみると、隣の席に座っていたのは、なんとタヌキでした。驚いた富安さんが「土居さんですか?」と尋ねたら、タヌキが「そうです」と答えてもっとびっくり!

 タヌキ曰く「わたし、仕事がオフの時はタヌキなんです」。その言葉に、「そうだったんですか」とすっかり納得した富安さんは、夢の中でタヌキとともに道後温泉に行きました・・・・ということです。

 その夢があんまり面白かったのでタヌキの土居くんのお話を書くことを思いついたそうです。自分からタヌキだということをカミングアウトする愉快なタヌキのお話を書こうと思われて、そうして誕生したのがこの「タヌキの土居くん」というわけです。

     ー以上ー

 絵本が、このようにして生まれたきっかけがおもしろいと思いました。

 なお、添付の写真は私が作成した、出前公演のポスターです。
         マリリン