初舞台を終えて

私は今年2023年1月にかんじゅく座に入り、この度16回目の本公演【旅はまだ終わらない・・・】に出演した。私は主人公・徹に若い頃パワハラを受け、絶望から立ち直る道明という役だ。

昨日、舞台本番の動画がアップされ、改めて観てみるといろいろとやらかしていた。
私の見せ場でもある川のシーンでは、自分でも驚くほどセリフがカミカミだった事、ラストではパン屋のエプロンを表裏反対に着てカーテンコールに登場して思いっきり胸のど真ん中に「ビールチーム高原」の名札が貼りついていた事。動画を見てそれに気づいた時は血の気が引いたけれど「全国の人への自分の宣伝になるので良しとしよう」と自分を慰めた。

本番を迎えるまでにもいろいろな事があった。正に私にとって旅そのものだったような気がする。本番直前、セリフは何とか覚えたつもりになっていたが、段取りが頭の中で整理できていない。劇場に入る最後の稽古でも、私がいるはずもないパン屋のシーン。私は何故か後ろで黙々とマキをカマにくべている。「高ちゃんなんでいるの?」その言葉に、エマさんをはじめパン屋メンバー全員を不安にさせた。2日後に劇場でのゲネプロ(衣装を付けて本番同様の通し稽古)があるというのにさすがにマズイ! その夜、マイ香盤表に「ここには絶対出るな!!」と赤マジックで追記した。

小道具でもみんなをヤキモキさせた。「私が作ります」と言ってしまったカマから出し入れする特大のへら「あんなデカいもんどうやって作ろうか・・」悩んでいるうちに時間ばかりが過ぎてゆく。本番まであと10日にさしかかった頃、ついに小道具係の2人に呼び出された。「あともうできていないのはアナタのシャベルだけよ!できないなら言って!こっちで作るから」いつも優しいゴエモンの目が怖かった。ヤバい、、、もう100均の赤いチリトリを使っている場合ではない。・・・そして徹夜した。焦げ目をゴエさんに付けてもらって完成! これが本番でも大活躍!公演が終わってもこれだけは捨てらんねえ、部屋の壁に飾っておこうと決めた。

そしていよいよ劇場入り、まずは別チームのゲネをじっくり観た後、私にとって初めての劇場の作りを把握しようと楽屋廊下をくまなく歩いてみた。しかしタイミングが悪かった。マダムの楽屋を通った時何人かが着替えの真っ最中、とっさに私は下を向いて通り過ぎたが、まるでゴキブリでも見るような目で見られているのを感じとれた。レーズンチームの皆さんごめんなさい!

そして迎えた本番、流れを説明してくれる女性の舞台監督。マスクの下の顔は見たことがない。そして決して笑わないので少し怖い。でも後になってこの人が凄い人だと気が付く。私の舞台裏の仕事のひとつパネルの捌け、「あ、やっていない!忘れた!」楽屋でそれに気づいた時には芝居は先に進んでいる。舞監さんがやってくれていたのだ。そしてパン屋のシーンで私が間違えてテーブルを前に押し出した時、元の位置に引き戻された。「ここでは出さない」と小声で、、助かった。そして別のシーン、転換の暗闇の中、私がカマのフタの部分に覆いかぶさっている絵を見つけて「あれ?はずし忘れかな」と思い、はずそうと手を掛けた瞬間、又しても黒い影がスーッと現われて私の手からアッという間にそれを奪って消えた。「そうか!舞監さんの仕事に手を出しちゃダメなんだ。オレ自分の役目も忘れてるくせに・・」、、、反省した。その後、あの方は自分の仕事をキッチリとこなすだけでなく常に演者の動きをしっかり見ていて動線の確保、演者の失敗も見逃さずとっさにフォローしてくれるスパイダーマンのような方だと気が付いた、、、女性だけど。

そしてなんとか千秋楽を迎え身体は疲れているはずなのにやり切った解放感と見に来てくれた人の「いい舞台だったよ!」という満足そうな顔を見て最高の一日となった。
エマさんは40人全員の鏡前の名前短冊の裏に一人ずつコメントを書いてくれた。私の短冊の裏には、【祝 初舞台 ステキな旅を!!】の文字が。今 終わりましたよ最初の旅が・・・エマさんありがとう。そして皆さんありがとう。

たか

〝ザ ・ポケット〟初舞台

出前公演の時よりはリラックスして楽しみながら稽古をして、本番を迎えることができました。自分が考えた台詞は覚え易かったし、気持ちを乗せるのが壮快でした。まくら(ホ-ムレス)との出会い。れいこは支援者、銀行マンは仇。とてもわかりやすい設定です。

れいこには最大限の笑顔と明るい語調で話しかけました。銀行マンには低い声でまくし立て、追い詰めるように怒鳴り散らしました。この急転直下の語調の変化を演じることがとても大切と考えました。

追い詰める台詞のキーワードは、「仕事」「銀行」「融資」「退職金」「死亡お見舞い金」「倒産寸前」「見殺し」「助ける」。特に「融資」の「ゆ」と「う」は息を喉の方に吸い込むようになるので、発音に気をつけました。「融資」が客席に届かないと、まくらがなぜ銀行マンをどなりちらしているのかがわかってもらえないからです。

今回は出番も台詞も少なかったので、細かいことに気をつけながら舞台に立つことができました。台詞の速さ、強弱、間の取り方、滑舌等を本番の舞台上で体感できたことはとても貴重な経験でした。

しば