小さな演出助手?

自身の演技を客観的に観ることは難しく、エマさんのダメ出しを書き留めきれないことも正直あります。よくエマさんから、「こっちから見て」の声が飛び、客席側で、その模範演技を目の当たりにしても、非力な私は勘所を素早く覚えきれなかったりして…

そんな中、「雨の日は嫌いです」のインプロで〝ゴロロ〟を演じる稽古をした頃からでしょうか、稽古場に小さな演出助手?がやって来ました。そう、それは動画です。以前からエマさんも、〝これは〟というシーンを撮影してくれていましたが、演出をしつつ稽古全体を収めることは無理でした。

帰宅後、改めて動画を見直すと、台詞にリアリティーはあるか・出はけ時の動きは袖の中まで意識しているか・台詞のない時も役として板にいるか・ビリヤードのごとく相手に呼応した動きになっているか・自分の癖・エマさんからの指摘の意味…etc.を、レンズが捉えた映像が伝えてくれて、週一回の間隔の稽古で、従来は〝♪三歩進んで二歩下がる~♪〟状態だったものが〝♪三歩進んで一歩も下がらない~♪〟に近づければ幸いと常々思うのです。

両チームが動画をアップすることは、各々の動きを確認出来て、ダブルキャスト制を敷くかんじゅく座の理に叶います。加えて、普段交流が難しい両チームの絆を深める一助にもなります。小さいけれど凄いぞカメラ!

と、持ち上げておいて何ですが、〝気持ちを作り真剣に稽古に向き合うこと〟に勝るものではなく、動画は副読本の位置付けで、頼りすぎないように自身を戒め稽古に臨んでいます。

アベ

2023年のかんじゅく座出前公演を終えて。。。

12月8日に、かんじゅく座2023年度の4回の出前公演を終えました。「無事に終えました」と書けないのは、降板が3人、その他トラブルが続いたからです。それでも続けたものだけが感じられる喜びというのは、やはり神様がくださったと思います。

今回は原作に恵まれました。絵本「いのちをいただく」の原案者である坂本さんは、今や全国から講演オファーが来る方です。陰日向の陰で働いている人が、こうして大切なメッセージを発信してくださったことに、社会が注目したのは決して偶然ではなく、世界の環境、日本の食糧危機が叫ばれる今、誰もが心の片隅でチラチラと気になっていたからこそ、反響が大きかったのだと思います。

また児童書「海をこえて虫フレンズ」はたくさんの自然に関する知識を与えてくれる作品で、お勉強っぽいにもかかわらず主人公の引っ越しをめぐる胸騒ぎがドラマ性を引き出す秀逸な作品でした。

どちらも子どもがたくさん出てくる物語。これを全て60歳以上のメンバーが演じるという無謀な舞台ですが、「堂々とやってしまったもん勝ち」というところがあり、またアマチュアという特権にも似た親近感は、今回の作風によくマッチしたと思います。

改めて、原案の坂本義喜さん、全ての許可をくださった講談社さんに御礼申し上げます。

また、出前先で見てくださった皆さん、受け入れてくださった先生方、そこまでのコーディネートをしてくれた座員がいたからこそ、成立しました。本当にありがとうございました。

かんじゅく座は次の舞台に向かって進みます。今年度のテーマは「いのち」です。高齢者の実感する「いのち」というものを声と体で精一杯表現してゆきたいと思います。

鯨エマ